H30.5月 院内報 天衣無縫

H30.5月 院内報 天衣無縫

=第250号平成30年5月号=

肺癌について  わが国では、肺癌で亡くなられる人々は毎年増え続け現在7万人を超え、胃癌を抜いて癌による死亡の第一位となっています。

肺癌は癌の中でも発見時進行していることが多く、肺癌が治る割合は約30%で癌の中でも治りにくいとされています。

しかし近年肺癌の治療も進歩してきており、治る割合が少しずつ増えてきています。

Ⅰ.肺癌の診断の進歩

わが国の肺癌は喫煙者の低下に伴い扁平上皮癌は減ってきましたが、腺癌という型が増えてきてX線などの画像で診断できる割合が増えてきています。ですからまず、年に1回の健康診断(市町村での癌健診)で胸部X線を撮ることが基本です。日本ではまだ受診率が高くなく、受診率が高くなればなるほど早期発見の機会が増えてきます。また、近年胸部CTを健診に導入する動きが少しずつではありますがでてきて、早期発見の割合がさらに増していくことが期待されます。

Ⅱ.肺癌の治療の進歩

1)手術 肺癌の根本的治療は手術で切除することですが、早期発見の割合が高まると手術による治癒率も高まり、また開胸することなく胸腔鏡という内視鏡のカメラを用いてより侵襲の少ない安全な手術が可能となります。  

2)放射線治療   放射線の種類や放射線量の調節、焦点の絞り込みが進み、より効果的で安全性が高まってきています。  

3)化学療法   少しずつではありますが、より効果的で安全性の高い薬の開発が進んできています。

4)免疫療法   近年、肺癌の発症、増殖及び転移に関する研究が進み最も進歩が著しい領域で、この10年間相次いで薬剤が開発されてきました。これらの薬は肺癌が成立する過程におけるさまざまな体内の物質に対する抗体を用いて肺癌を治癒に導く作用をし、抗体医薬、分子標的薬とも呼ばれています。これらの薬により肺癌の縮小を図り、また少しずつではありますが生存を延ばせるようになってきています。しかしこれらの薬は新しい薬が多く、長期の効果はこれから検討されます。また、従来の化学療法薬(いわゆる抗癌剤)による重大な副作用である骨髄の抑制や腎不全などは少ないのですが、間質性肺炎や重篤な胃腸炎などの異なった副作用を有しており注意が必要です。 肺癌の判断と治療は少しずつ進んできて、予後も改善されつつありますが何よりも大切なことは予防です。肺癌の二大リスクは喫煙と大気汚染とされており喫煙をしないこととまた自動車や工場などの排気ガス対策が最も重要です。

浦田医院 院長 浦田誓夫