浦田医院

院内報

=第7号 令和元年11月号=

難治性気管支喘息

夏から秋へ季節の変わりめの頃は、気道の過敏性が亢進し、またアレルゲンであるダニや家のほこりが増え、気管支喘息発作がおきやすくなります。

 気管支喘息の約5%~10%にこれまでの吸入ステロイド薬、長時間作用薬のβ2刺激薬(LABA)やテオフィリン薬で十分なコントロールができない難治性喘息があります。難治の要因としては、高度なアレルギー性、気道過敏性の他に慢性閉塞性肺疾患(COPD)が合併し、肺の構造が損傷される場合があります(ACO)。高度なアレルギー性については最近いろいろな生物学的製剤が使用可能となって有効性を発揮しています。

 ACOは特に高齢者に多く、治療が手遅れにならないよう、早め早めの治療が必要です。普段から吸入のステロイド薬、長時間作用のβ2刺激薬(LABA)に加えて長時間抗コリン作用薬(LAMA)の併用(トリプル治療)を行い、それでも発作がおこる場合には早めに発作への治療が必要となります。

 わが国は高齢化が進んでおり、今後、気管支喘息とCOPD合併のACOは増加すると推測されていますので、定期的に通院され、コントロールをしていかれるようお願いします。

          浦田医院 院長 浦田 誓夫

令和元年6月 院内報 天衣無縫

天 衣 無 縫
=第2号 令和元年6月号=
梅雨とかび(真菌)

 いよいよ梅雨の季節になり、むし暑い日々が訪れました。大雨による災害は避けたい所ですが、またこのような高温多湿の気候の下では家の中でかび(真菌)が繁殖しやすくなります。かびはこうじのようにみそ、しょうゆ、納豆や酒などの発酵にかかせない生き物で、またペニシリンという世界最初の抗生物質として発見された抗菌薬の成分も造り出しており、人類はかびをうまく利用してきましたが、一方かびはさまざまな病気の原因ともなります。

かび(真菌)による病気は大きく分けて皮膚や粘膜(口腔、食道、膣など)で繁殖する浅在性真菌症と体内の内臓(特に肺や脳)で繁殖し重篤となりがちな深在性真菌症があります。
浅在真菌症にはいわゆる水虫(白癬)、口腔、食道、膣カンジダ症などがあり、通常局所の外用処置で治療されます。爪白癬症も最近では多く外用の液で治癒が可能となってきました。
一方深在真菌症には四大真菌症と言われるアスペルギルス、カンジダ、クリプトコッカス、ムーコル菌が代表的です。これらの真菌は高齢、抗癌剤の投与、副腎皮質ステロイドの投与、糖尿病、血液疾患、エイズなど免疫能力が低下した状態でかかりやすくなり、時にこのような感染による体の組織の破壊とは異なりかびの胞子へのアレルギー反応で、気管支喘息(アレルギー性気管支肺炎アスペルギルス症)や過敏性肺炎(夏型、トリコスポロン)をおこす場合があります。
治療は組織を破壊する感染性の場合はリスクとなる免疫抑制をできるだけ改善すること、室内を清掃し、かびが生えないようにすること、ほこりっぽい所はさけることが最も基本で、発症した場合は早期に診断し適切な抗真菌薬の投与が必要となります。
 診断のためには真菌の培養や同定が必要で時間がかかりますが、最近は血液検査による真菌のバイオマーカーが測定できるようになり早期診断が可能となってきました。アレルギー性の疾患の場合は環境をクリーンにすることはもとより、副腎皮質ステロイド薬の吸入や全身投与が必要となります。
梅雨の間は掃除をこまめにされて、室の湿気をできるだけ下げるようにして予防してください
 

                                        浦田医院 浦田誓夫

令和元年 5月 おしゃべり通信 

おしゃべり通信
No.234 H31.5.15発行  如春会 浦田医院

~H29年4月発行 日本小児科医会会報特集~

スマホパンデミック!⑪
<スマホ社会の落とし穴>

2.「劣化」の実相 -⑤
(4) 生活の乱れ・睡眠時間の短縮化 
 
 子供の就床時間は年々短くなっています。下図は小学生の生活リズムを書いたものですが、一日に必要な生活時間の構成は、学校制度が開始される前からそう多くは変わっていませんが、全国民の教育が義務教育化されると、学校という集団に所属する為の社会適応が当たり前に始まって、学校制度に適応するための時間(=家庭学習・学校へ行くための準備)がその中に入ってきます。

 一般家庭の生活リズムの中にTV視聴が入ってきたのは昭和35年頃のことです。最低必要な生活時間の中に新しい事象が始まれば、何を切り捨てれば24時間の収支が合うのでしょうか?そうです。「遊びの時間内にそれを入れる」若しくは「何にもしていないと考えられている時間=睡眠時間」を短くするしか、その為の時間の確保はできないのです。そして実際に日本人の生活時間から「身体遊び」「外遊び」「睡眠時間」は短縮され続けています。

1981年に22時43分だった中学生の就床時間は2014年に23時12分とこの30年で30分も遅くなっています(日本学校保健会調査)。1983年に発売されたTVゲーム(男子が依存しやすい)、1999年頃からPC/メール(女子が依存しやすい)機能を持ったケータイと称する携帯用端末機の普及が、この睡眠時間の短縮と連動していることを認めざるを得ない状況だと皆さんも納得されますよね?

 特に注目しなければならないのは、”ガラケー”時代には平日深夜1時以降に寝る中学生は11.8%だったのに対し、スマホを持つ生徒が1/3を超えると36.9%に激増することです(福岡市教育委員会・NPO子どもとメディア共同調査2013)。

子供たちの「疲労感」が最も強いのも、週明けの月曜日であることも解っています。週末に平日の疲れをとって、月曜日を迎えるのではなく、平日の2~5倍に増える電子映像メデイアへの接触時間が土日祝日などの休日を真の休養日にしていないのが、日本の家庭生活の実態なのです。つまり、平日に疲労回復し、週末につかれている・・?こうして疲れ果てて学校に行っているのでは、楽しいはずの学習にも嫌気がさし、根気も失われて、これでは学校での教育の健全性を保てないのは当たり前と言えるでしょう。これは家庭の習慣・社会教育の問題であり、学校だけが「学習の問題としてこれを改善しよう」としても、無理があるというべきです。

依然、高水準が続いている「不登校」。当事者である子供たちは概ね「いじめられた」「自分にとって学校に不適切なことがあった」ことをきっかけに学校に行けなくなったと言っていますが、客観的にみると、当初はどうあれ結果的には、学校にいけない憂さを「電子映像接触」に振り向け、今度はその為の疲れが取れず、そうやって長期欠席が続くと学業成績も思うようにならず、不達成感はいよいよ増大し、自己評価を自分で下げる結果となって、学校に復帰できなくなっている実態も既に明らかといえます。

これについて当院外来診療でも如実であることは、本人や家族ばかりでなく学校及び教育関係者も当初の引き金となった事案に拘泥する傾向が強く、続いて起きてくる家庭内で起きる自己責任に属する二次的現象をなかなか認知することができず、悪循環に入ってしまう例が多いことです。当初の問題は当初の問題として、具体的に、今できる子供の育ちへの支援を並行して行わなければなりません。つまり、どうやって「生活リズムを保持」するか?学校に戻った時に困らないように「学力を保持」しておくか?大きな原因をなっているだろう「メディア」オフを達成するか?等々に尽力すべき事は多い筈だと思いませんか?

子供の生活リズムを健全に保つこと。これは健康の問題から社会的成功まで、全ての幸福のための基本です。 

子どもの事故と対策~子どもを事故から守ろう~
日頃から練習しておきましょう★「救急車の呼び方」

① 実際の呼び方
・119番にダイヤル
・「火事ですか?救急ですか?」と聞かれるので『救急車をお願いします』と答える
・まず住所を伝え、近くに目印となるものがあれば伝える
・子どもの状態を簡潔にはっきり伝える
・応急手当の指示を受け、従う

② 救急車に乗る前に用意するもの
・健康保険証、子ども医療費受給者証、母子手帳
・タオル、ティッシュ、ビニール袋
・着替えの衣類
・ミルク、哺乳瓶
・身体の状態のメモや熱型表、かかりつけ医の薬など

参考:改訂4版 子どもの事故と対策―子どもを事故から守ろう―
文責:管理栄養士 金柿

令和元年5月 院内報 天衣無縫

天 衣 無 縫
=第1号 令和元年5月号=
大腸の悪性腫瘍について

悪性腫瘍とは無秩序で無限の増殖能を持つ細胞により正常の細胞組織が破壊され、放置すると死に至る病気です。大腸の悪性腫瘍は99%以上が癌で、そのほか稀に悪性リンパ腫や肉腫がみられます。大腸がんは日本ではこの30年間で約5倍に増加しており、男性では肺癌、胃癌に次いで3番目、女性では癌の中で1番多くなっています。
 大腸癌が増えた理由として、生活スタイルの変化が関わっているとされます。大腸癌の危険因子として最も高いのはアルコールで、次いで加工肉(ハム・ベーコン・ソーセージ等)・赤みの肉・肥満・糖尿病・喫煙(直腸癌)などが知られ、逆に予防因子として、身体活動(結腸癌)・食物繊維・カルシウム・魚の油の不飽和脂肪酸が知られています。他にも高身長・コーヒー・カロテノイド・牛乳・ビタミンD・にんにく等が言われていますが確実とは言えません。
 大腸は成人で約1.2~1.8mの長さの管状の臓器で、小腸で消化・吸収された食物の残りかすから、水分を吸収して便を作り肛門より排泄する働きをしています。大腸は、小腸と繋がる盲腸から始まり、結腸(上行結腸・横行結腸・S状結腸)S状結腸・直腸移行部,直腸までを言い、直腸は肛門管に繋がっています。大腸癌は50歳代より高年齢化につれて増加しその60~70%はS状結腸と直腸から発生してきます。
 大腸癌の早期診断には便の潜血反応の検査と大腸カメラを用いますが、通常の健診では便潜血反応を2回行います。感度は60~70%程度ですが、それでもこの検査の受診率そのものが男性で約40%女性では約30%で受診率が低く、積極的に受けられることをおすすめします。大腸カメラは人間ドックで検査されますが、大腸はひだが多くしかも硬いためカメラといえども完全に調べることは困難で、両方の検査が望ましいと言えます。もちろん何らかの消化器症状があれば医療機関で同様の検査が行えます。
 大腸癌は他の癌と同様、局所にとどまり転移のない早期癌の段階で発見すると90%以上の生存が可能です。進行癌では現在、手術・化学療法の組合せで転移がなければ50~60%と進歩しつつあります。しかしやはり健診を受けて早期に発見することが最善の選択です。
                                      浦田医院 浦田 誓夫

スタッフ募集のお知らせです。

浦田医院では、看護師を募集しております。

厳しい医療状況の中ですが、有床診療所の長所を最大限生かせる様、努力しています。

女性中心の職場ですので、自分達で職場環境を良くする協力のできる人を望んでいます。

お知り合いの方や、ご家族の方など、身近に看護師・准看護師の資格のお持ちの方がいらっしゃいましたら、ご紹介下さい!!

●当直可能な方(当直が可能な方ならパートでも結構です。)

●遅出勤務の可能な方(午後からの勤務でも可)

●夜勤のみでも可能

●勤務時間の詳細については、ご相談下さい。

 

≪お問い合わせ先≫

医療法人 如春会 浦田医院

TEL 0968-74-2412

担当 大野・緒方までお尋ね下さい。

H30.8 院内報 天衣無縫

=第253号平成30年8月号=
高尿酸血症・痛風

1.高尿酸血症とは
わが国では近年、血液中の尿酸という物質が増えてきていることが報告されています。男性と女性で差がありますが、その頻度は男性で約30%、女性で2~3%です。尿酸は核酸(プリン体)という遺伝子の素材として必要な栄養素の体内での分解産物で、多くは腎臓や一部消化管から排泄されています。血液中の尿酸が7mg/100ml以上、特に8mg/100mlを超えると血液中の尿酸が結晶化し、体内の組織に沈着して炎症を起こしてきます。特に関節に沈着すると痛風という激烈な痛みを伴う関節炎が発症してきます。痛風とは、風があたっても痛みを発すると言われるほどで、3大激痛の1つと言われています。しかし、近年、高尿酸血症は関節炎のみならず、尿路結石や腎臓病の悪化(慢性腎臓病;CKD)、動脈硬化症、高血圧症、メタボ、心血管疾患や脳卒中とも関連があると言われており、高尿酸血症のコントロールの重要性が指摘されています。

2.高尿酸血症の治療
 尿酸は核酸の代謝産物です。核酸は遺伝子の素材であり、炭水化物、蛋白質、脂質、ビタミンに次いで第5の栄養素と呼ばれる大切な栄養です。従って、欠乏は避けなければなりませんが、過剰に取ると尿酸が増えてきます。核酸は、肉や魚などの蛋白質の多い食材に多いため、肉や魚などを取りすぎないようにして下さい。また、野菜は体内の尿酸の排泄を促進するなど、血液中の尿酸を下げる作用があり、多くとって下さい。しいたけなどのきのこ類は核酸成分は多いのですが、通常の量では問題ないと言われています。アルコールは体内の尿酸の排泄を妨げ、高尿酸血症を誘発、促進しますので、控えてください。特にビールは、麦芽の核酸を多く含むものがあるので、要注意です。また、運動は筋トレよりは歩行、ジョギング、テニス、ゴルフなどの有酸素運動が効果的です。
 食事や運動で改善が認められなければ、薬物治療を行います。現在、高尿酸血症の治療薬として尿酸生成阻害薬、尿酸排泄促進薬、尿アルカリ化薬、尿酸分解酵素薬などがあり、症状に応じて使い分けをします。また、痛風発作時はコルヒチン、鎮痛解熱薬、副腎皮質ホルモン薬を適宜使います。
浦田医院 院長 浦田誓夫

H30.7 院内報  天衣無縫

=第252号平成30年7月号=
下 痢

 体の中の水分は、口から入り胃腸を流れていく間に、非常に多くの出し入れがあり、まず、口から1日に約2ℓの水分をとると胃腸からの吸収が約9ℓ/日。逆流胃腸からの分泌が約7ℓ/日にもなり、便として約100mℓ~200mℓ/日の水分が排泄されます。従って下痢は胃腸からの水分の吸収が減っておこる(吸収不良性下痢、浸透圧性下痢)か、胃腸からの水分分泌が過剰になりおこります(分泌性下痢、滲出性下痢)。

Ⅰ.吸収不良性下痢、浸透圧性下痢
 冷たい飲物やアルコールのとりすぎ、強いストレスなどにより腸壁の蠕動が刺激されやすくなります。また、慢性の腸炎や手術で腸を切除し腸が短くなった場合、小児の乳糖不耐症、膵臓の疾患や胆のう切除後でも脂肪の消化が低下するため脂肪性の下痢となります。他、6月号の便秘の項で述べましたように塩類下剤、浸透圧性下剤、腸の運動を刺激する下剤の使い過ぎでも下痢します。

Ⅱ.分泌性下痢、滲出性下痢
1)多くは感染性の胃腸炎でおこります。
冬はロタウイルス、ノロウイルスやアデノウイルスなどのウイルス性胃腸炎が主体となりますが、これから夏に入ると細菌性胃腸炎が増えてきます。多くは、食品の保存に問題があり、食品中で細菌が増殖したことによります。腸炎ビブリオ、サルモネラ、カンピロバクター、大腸菌などが代表的ですが、特に腸管出血性大腸菌(O-157など)は時に重症となります。治療は脱水の治療とともに適切な抗菌薬を用います。強い下痢止めの薬は感染が悪化する場合があるので、慎重な投与が必要です。また、コレラは稀ですが、コレラの下痢は腸炎による浸出性下痢に加え、コレラトキシンという毒素が腸からの水分分泌をおこし、重篤な下痢のため容易に脱水におちいります。また、抗菌薬(セフェム系)内服による偽膜性腸炎は腸の常在細菌叢の変化によりクロストリウムディフィシル菌が増殖して発熱、腹痛、下痢をおこしてきます。

2)非感染性下痢
①出血性大腸炎は、高齢者に多く、腸管の血液循環が低下して出血を伴う下痢が出現します。また、潰瘍性大腸炎、クローン病などの免疫疾患でも慢性の下痢や出血を伴います。大腸癌でも同様のことがおこります。他に鎮痛下熱薬や胃薬のランソプラゾールなどでも下痢を起こす場合があります。
②過敏性腸症候群
ストレスや食物摂取により胃腸の運動や水分分泌が過剰になり下痢をおこしてくる場合があります(下痢型)。便秘型もありますが、6月号で述べました。治療はストレス回避、充分な睡眠、食事量のバランス、夜食や偏食をさけることがまず大切です。薬としては消化管の運動や知覚過敏を抑えるためのトランコロンP、イリボーなど、また腸内細菌叢のバランスを整えるための乳酸菌製剤を用います。
浦田医院 院長 浦田誓夫

Y・O

私は営繕部で働いています。

入院患者さんや、外来の患者さんがいつ来ても清潔で気持ちが良いと思っていただけるように頑張っています。

N・F

はじめまして。 私は営繕担当(掃除全般)で院内の掃除等頑張っています。

今後ともよろしくお願いします。